群馬銀行が見た下仁田町の今と、地域活性のための寄り添い方

群馬銀行 下仁田支店|野本和之さん / October 26, 2017 / ささえる /

町唯一の銀行である群馬銀行下仁田支店。銀行という立場ながら、下仁田町が活性化するために地域に寄り添い続けています。今回は、下仁田支店支店長 野本和之さんに、町の課題や現状についてお話を伺いました。

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―資料をありがとうございます! もともとの建物は、大変レトロな趣きのある建物だったのですね。

はい、下仁田支店は昔、下仁田銀行っていわれいた大正建築をそのまま平成2年ごろまで使いっていて、その翌年に建て替えています。レトロなが外観でしたから、残しておけばこういうのとっておけばよかったのにといわれるし、そうしておけば遠くから来た人も喜んでくれたと思うんだけど。やっぱりなかなかそれを維持していくのは大変で……(笑)

人のライフステージに合ったさまざまな商品提供を

―では早速ですが、群馬銀行から見た下仁田町の課題について教えてください。

人口減少は日本の抱える課題ではありますが下仁田町も同じです。私たち地方銀行にとってどこが問題かというと、ある程度預金をもっているお年寄りが1人お亡くなりになるとしますよね。ただそれを相続する人が、群馬銀行の営業エリアに住んでいないというケースが多々あるんですよ。

これは、私たちだけではなく、地方銀行などの金融機関が深刻に抱える問題だと思うのですが。これは仕方ない部分もあるんですけどそうなったときに、最後までサポートしたい。だからここで生まれ育った人は、ここに住んでいて欲しいという気持ちもあります。

―現在はどのような取り組みをされているのでしょうか?

下仁田町は昔、非常に栄えていて働き口もいっぱいあり、比較的昔から女性も勤めに出ていた地域なんですよ。当時の人って専業主婦とか農家の嫁もいましたが、勤めて旦那さんと同等かそれ以上の収入を得ていた人もいたそうで。

現在はその層である70代〜80代の女性といったようなお客さまが多いんです。これはどこもやっていることですけど、そういった方々を対象に金融資産の運用をしています。他には、少ない若年層への資産形成であるとか、またはライフステージに合った商品の提供などしております。

あとは、幸いなことに下仁田町はこんにゃくの製粉業が栄えていてますよね、実際群馬県が9割以上生産してるんです。従来は下仁田町や南牧村のこんにゃく芋が多く、農家さんが大規模化してました。現在だと生産地は昭和村であるとか、この近くですと安中などに大規模農園があります。

私たちも下仁田町に根を張って商売をしていますので、融資業務ということになると、こんにゃくも大きいんですね。時期になると、他の地域の銀行が営業にくるということがあるくらいですから。例えば100億のこんにゃく芋を買うための資金付けなどもあるので。

―町の取り組みである「ねぎとこんにゃく下仁田奨学金※」のように3つの銀行が一緒に何かに取り組むというのは初めてだったのでしょうか?

(※下仁田町がおこなう奨学金制度で高校卒業後に下仁田に戻って居住している期間の元金と利息金額を、「ねぎとこんにゃく下仁田奨学金基金」から補助する制度。詳細はこちら)

その前から、しののめ信用金庫さん、群馬県信用組合さんとうちの3つの同業者で組むようなワーキンググループはあったみたいです。そこでは、町が所有している土地や分譲地をくれちゃう取り組みなどをおこなっていました。新しく町の外から来る人が家を建てても、すぐどこかへ行ってしまうのも意味がないので、何年か住めば所有権移転ができるようなことをしていました。

私たちも紆余曲折しながら何とか擦り合せて、役員にもいろいろ応援してもらって。通常のローンよりも増えてしまっているという事実もあるのですが、利益よりも『下仁田町にとって良いならば当然それはやりましょう』ということでつくりました。

「ねぎとこんにゃく下仁田奨学金」も同じように難しい部分もありましたが……。急ピッチで話して概要をつくったんですね。もともと群馬銀行オリジナルの商品がありましたが、それだとこの町のニーズに合わない部分もあったので、町や他の金融機関と擦り合わせていきました。

信用組合と銀行では、ビジネスモデルも違う部分もありますから、いろいろな意見を出しつつ試行錯誤しました。

人に、土地に、仕事に惚れ、すべてに真剣に向き合う

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―野本さんが支店長として、下仁田町のみなさんと関わる上で意識している点はどのようなことでしょうか。

今でこそ、人口は減ってますけどやっぱり下仁田町は昔、もっと活発だった場所なんですよね。ボーリング場や映画館、昔の娯楽施設、商店も一通りありました。今の60代70代の方ですと隣町に住んでいた方が、下仁田町に行くのが嬉しかったっていう話を聞いたくらいです。

そういう昭和の時代にできた「大人数で宴会とかできる場所」が近隣の町にはないのですが、下仁田町には残っているんです。だから、地域の皆さんとのお付き合いをするときは、その名残じゃないですけど、真剣になってお酒を飲むなんていうところであります。

個別のお客さんとのお付き合いも私たちは全部参加しますし、いろんな会の会長さんとかにも呼ばれますので。群馬銀行も町にとってはたったひとつの銀行なので、それなりに扱ってもらえますし、やりがいもありますし。 こういうお付き合いも含め、どこにいってもそうですが、本気でとことん付き合います。昔上司にいわれたことがあるのですが、「人生3惚れ」といって『人に惚れろ。土地に惚れろ。あと仕事に惚れろ』っていう。あとは、まだまだ行ったことのないお店もいくつかあってまだまだ開拓しがいのある楽しい町ですよね。

創業支援のハードルが下がった今、若者のアイデアを応援したい

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―この町で新しい取り組みをはじめる若者に、銀行の立場として伝えたいことを伺わせてください。

下仁田町に限らないですけど、支援もできる限りしたいですね。新しいビジネスをはじめるときは、「おもしろそう」だけど、「実績がない」とか「わかんない」っていう話になることがあると思います。下仁田町が取り組む「ローカル10,000※」のような制度では、下仁田町が銀行に投資するなど、アイデアにお金を出すようなこともあります。

(※産学金官の連携により、地域の資源と資金を活用して、雇用吸収力の大きい地域密着型企業の立ち上げを支援する。「地域経済好循環推進プロジェクト」のひとつ)

あとは創業に関しては、いろんな制度を組み合わせながら融資に立ち会いますし、県や市町村もとのタイアップもありますから。20年前と比べれば、創業の金融機関のとり組みってかなりハードルもが下がってますから。さっきちゃんとしたアイデアを自分の言葉で自分の文章でいえる人は応援したいですね。

群馬銀行 下仁田支店
〒370-2601 群馬県甘楽郡下仁田町大字下仁田210−1
TEL. 0274-82-2221
Web. http://www.gunmabank.co.jp/