下仁田町の地方創生を根底から支える、群馬信用組合の取り組み

群馬県信用組合 下仁田支店|川田隆茂さん / October 26, 2017 / ささえる /

下仁田町に2店舗の支店がある群馬県信用組合、組合のネットワークや地域の情報を活用し、創業支援や地域活性化に貢献しています。今回は、下仁田支店長の川田隆茂さんに、町の課題や現状、そして今後の展望についてお話を伺いました。

下仁田町民に寄り添い、地域をサポートしていくという覚悟

―群馬県信用組合から見た、現在の下仁田町について教えてください。

全国的に言われていることですが、下仁田町も少子高齢化、人口の減少といった課題があります。地場産業の衰退も顕著です。

下仁田町は面積の80%が山林であり、平地が少ない環境のなかで、木材業や製材業、建設業などが栄えていました。昔は製糸関連の工場があり、多くの女性が働いていたことから、化粧品屋や美容院なども繁盛していたと聞いています。

―ネギとコンニャク下仁田名産と言われていますが。

斜面で水はけの良い土地が多いことから、以前は蒟蒻生芋の生産者も多かったですが、高齢化や蒟蒻生芋の品種改良が進み、今ではごく一部の生産者しか残っていない状況です。現在、蒟蒻生芋生産者は昭和村、吾妻、安中等、大規模農家が主力ですが、蒟蒻製品を製造する為に必要な蒟蒻製粉製造は下仁田町が全国トップのシェアとなっています。

ネギ農家においても、生産者の高齢化が進み、後継者の育成が課題となっています。

―では、そのなかでどのような役割をお持ちでしょうか。

私たち最大の覚悟は、下仁田町に根を張り、下仁田町民に寄り添い、地域をサポートすること。信用組合としての地域貢献というのは、一番は地域に本業である資金を提供することです。安定した収益を確保しサポートできる体制を作っていきたいと思っています。

少子高齢化、人口減少に歯止めをかけるために、日本全国でさまざまな取り組みをしているようですが、成功事例は少ないようです。
下仁田町には公共施設や商業施設が整っていて、生活には不自由はない。ただ、職場がない、仕事がない、住むところがない状況では若年層は町から転出してしまいます。ひとつひとつの課題を解決し、スピードを上げないといけませんよね。

―なるほど。では現在の具体的な取り組みについて教えてください。

幾つかありますが、最近取扱いを始めたのは、「リノベーション資金」です。空き家及び空き店舗棟をリノベーションの手法により事業を行う方、地域事業やイベントへ積極的に参画して、地域住民とのコミュニケーションが図れる方を対象に資金を提供する創業支援資金です。若い人たちで創業したい、開業したいという方が来ていただければ一緒に事業計画を作成し相談に乗ることができます。

創業支援は融資の中でもデフォルト率が高いと言われています。事業計画が甘ければ創業1年~3年で破綻します。

私たちは創業する事業を評価し融資を決定します。(事業性評価=将来の収益性)
この企業は維持していけるだろうか。(企業維持力)
この企業は返済していけるだろうか。(返済能力)

地域に貢献できる事業、地域に必要とされる事業を正しく評価して融資する方針です。企業持続力があり返済能力があれば、優良保証や担保は不要であるということです。リノベーション資金は正にその事業をどう評価することだと思います。

街中に若年層が住める共同住宅等の建設を推進しています。
下仁田町にある賃貸物件は老朽化しており、若い夫婦が住むには劣悪な環境となっています。町外には通勤にも利便性の高い住居が多く、また、下仁田町にも新築の町営住宅もありますが所得制限等条件があり、若い人が結婚した場合、入居できず町外に転出する傾向があります。街中にはスーパーやコンビニ、ドラッグストア、小中学校等居住環境には問題なく、利便性も高く、街中に若年層が居住できる住居を建設することは移住・定住を促進する為にも必要不可欠であると考えています。

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意図をしっかりと伝え、結果を残すことでできる信頼関係を

―川田さんが下仁田町のみなさんと関わる上で意識している点は、どのようなことでしょうか。

中山間地域は全国的にそうだと思いますが、地域コミュニティがしっかりしています。住民相互間の信頼関係が構築されていて、地縁、血縁でのつながりが強いです。
ですから、あまり「金融機関の支店長」としての立場を前面にださないよう心掛けています。地域のイベント等に積極的に参加することで町民に親しみをもって頂けるようにしています。

前任の支店長から「こういうことは積極的にしたほうが良い」とか、「こういうことは駄目だよ」等、色々なことを助言していただきました。自ら積極的に町の人に関わることで町の人は本当に親しくしてくれます。

そして、最も大切なのがお互いの信頼関係です。
人は自分が期待できる能力が相手にあることが分かれば、まずは「信頼できるかも」と思います。ですが、能力よりも信頼の判断基準としてウエートが高いのが人格だと思います。

信頼関係の根幹は人格である「意図」と「誠実さ」が特に大事だと考えています。

どんな価値観を持っていて、どんな動機で行動する人なのか、そこが見えてこないと全幅の信頼は置けません。逆に言えば、「意図」を相手にしっかりと伝えることができれば、信頼される確率はぐっと高まると思います。

そして、「誠実」であること。正直であり、謙虚であり、有言実行であること。
自分の価値観や信念に従って一貫性のある行動を取ること。誠実さを欠くことが、信頼を最も裏切る行為となると思います。

「意図」があって「誠実」に接し、結果を残す、協力し合う相互依存で信頼は生まれると思います。

結果を残すということでは、福岡県うきは市から下仁田町副町長として赴任した今(2017年取材時)の吉弘副町長も総務省地域創生アドバイザーとしての経験や地元での実績等から相当なプレッシャーがあったのではないでしょうか。
自身の経験や新しい取組みは下仁田町役場の職員の目には新鮮に映ったことと思います。

―支店長の川田さんとしては、どのようなことを心掛けていますか。

私は下仁田町支店に赴任して6年目になります。
金融機関の支店長の支店任期は2年~4年が平均です。
それに比べれば長いです。
1年でお客様を知り、2年で実績を残す。が、通常のスタンスです。
お客様からすれば、慣れていて、親しみのある支店長が長くいてくれれば喜ばしいことですが、金融という面から見れば、長くいることにより判断を誤りかねないという事象になることも懸念されます。親しくなりお客様との距離が近くなったとしても判断を誤らないように心掛けています。

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つながりや情報共有を活かして、町と人のハブとなる役割に。

―この町で新しい取組みをはじめる若者に伝えたいことを伺わせてください。

創業、開業含め、資金が必要であれば気軽に相談に来てもらいたいということです。
金融機関としての資金計画的なアドバイスは当然のこと、他企業や事業者とのパイプを利用した情報提供も積極的に行うことができます。

融資(お金を借りる)のことだけでなく、事業計画の上で土地が必要であれば紹介することも可能ですし、観光のことで詳しい人を紹介することもできます。私たちの持ち合わせているデータベースを提供するということです。

従前の金融機関と下仁田町(行政)の関係は預金と融資の関わり合いが大半でしたが、地域創生が叫ばれる昨今では、金融機関と町との包括協定に端を発し、預金と融資以外の情報の共有や新商品の開発にも力を入れるようになってきていると思います。
ネギとこんにゃく下仁田奨学金※もその一つですね。

(※下仁田町が行う奨学金制度で高校卒業後に下仁田町に戻って居住している期間の元金と利息金額を、「ねぎとこんにゃく下仁田奨学金基金」から補助する制度。詳細はこちら)

―最後に、川田さん個人の下仁田町に対する思いを聞かせてください。

私は生まれも育ちも隣接の富岡市ですが、私の父親、祖父母は下仁田町で生まれ育ちました。ですから、下仁田町には親戚とかも多く、現在でも交流はあります。ルーツがある下仁田町だからこそ、魅力ある町にしたいと思っています。

群馬県信用組合 下仁田支店
〒370-2601 群馬県甘楽郡下仁田町大字下仁田338-1
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